Medical treatment診療内容 症状から探すシミ、あざ
一般的に言われる「シミ」というのは、実はいろいろな疾患の集まりであって、医学的には様々な疾患に分けて考える必要があります。それはなぜかというと、シミの種類によって治療法、予後が全く異なってくることがあるからです。そのため、シミの治療において一番重要なことは、一つ一つのシミに診断をしっかりつけることなのです。その最初の一歩を間違えてしまうと、治療法を誤り、治るはずのシミも治らなかったり、むしろ悪くなってしまうこともあるのです。また、まれではありますが、シミと思っていたものが、実は皮膚がんの一種であることもあります。それだけシミの治療においては診断が重要になってきます。たかがシミ、されどシミです。
シミの種類として主なものは
- 老人性色素斑(日光黒子)
- 脂漏性角化症(老人性疣贅)
- 後天性真皮メラノサイトーシス(ADM: Acquired Dermal Melanocytosis)
- 肝斑
- そばかす(雀卵斑)
- 炎症後色素沈着
などが代表的なシミの病名となります。
ただ、顔にできるシミは、1種類であることはむしろ少なく、ほとんどの場合、いくつかの疾患が組み合わさって存在しています。ですので、シミ一つ一つに的確な診断を行っていくには十分な皮膚科医としての経験が必須となります。その点が通常の美容外科や形成外科とは異なり、当クリニックの優位性だと思っています。当クリニックでは、できる限り一つ一つのシミに診断をして、それぞれに適した治療法をご提案いたします。ですので、いくつかの異なる治療を併用することも多くあります。
老人性色素斑(日光黒子)
最もありふれたシミで、30歳代頃から徐々に増えてきます。顔面や手背、前腕など、紫外線がよく当たる場所に出てきます。大きさは様々で徐々に濃くなり、大きくなってくることが多いです。顔の中心部よりも側面にできやすいです。治療に関しては、ダウンタイム(びらん潰瘍が生じて軟膏処置などが必要な状態になり、最終的にかさぶたを形成して治る)を避けたいか、それともダウンタイムがあっても効果を優先するか、シミだけでなく、しわやたるみも一緒に改善していきたいか、などの希望をお聞きして治療を選択していきます。たいていの場合はいくつかの治療を併用することが望ましいですが、予算との兼ね合いなどもありますので、相談しながら決めさせて頂きます。
⚫︎治療:ピコ秒レーザー、ピコトーニング、レーザーフェイシャル、エレクトロポレーション、ダーマペン4、ケミカルピーリング、シスペラ外用、ハイドロキノン外用、セラピューティックプログラムなど
脂漏性角化症(老人性疣贅)
老人性色素斑と同じように、紫外線のよく当たる場所に出る傾向がありますが、脂漏性角化症は手の平や足の裏以外、全身のどこにでもできます。できはじめは単なる褐色斑であることが多いので、その場合、老人性色素斑と区別することは難しいです。
⚫︎治療:炭酸ガスレーザー、ピコ秒レーザー
平坦なものではピコ秒レーザーでの治療も可能ですが、厚みがある場合は炭酸ガスレーザーによる治療が必要になります。どちらもダウンタイムがあります。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM:Acquired dermal melanocytosis)
13歳以上ででき始めることが多く、頬、目の下、鼻、こめかみ~目の上、おでこなどによくできます。両側に同じようにできることが多いですが、片側だけのこともあります。色は灰色~灰褐色~褐色~濃褐色です。原因は不明です。
⚫︎治療:ピコ秒レーザー、ピコトーニング
ピコ秒レーザーでの治療が最も効果は高いですが、ダウンタイムがあります。ダウンタイムを避けたい場合はピコトーニングをお勧めしますが、回数が必要になります。
肝斑
16歳以上ででき始めることが多く、頬、おでこ、唇の上などにできます。両側に同じようにできることが多いのですが、片側だけのこともあります。色は褐色で、境界がはっきりしないこと多いですが、場所によってはくっきりとした境界がわかることもあります。濃くなったり薄くなったり色調が変化することがあります。髪の生え際や眉毛など毛のあるところを避ける傾向があります。原因は紫外線やホルモン、ストレスなどが考えられていますが、はっきりしたことはわかっていません。洗顔やメイクなどにおいて、擦りすぎることが原因ではないかとも言われていて、実際女性に多いことも肝斑の特徴です。詳しくは肝斑の項を別に設けていますので、そちらも参考にして下さい。
⚫︎治療:トラネキサム酸の内服、ハイドロキノン外用、シスペラ外用、ピコトーニング(レーザートーニング)、エレクトロポレーション、ケミカルピーリング
これらを適宜組み合わせて治療しますが、第一選択は内服や外用、エレクトロポレーションなどによる保存的加療です。そこにピコトーニングを加えていくことで早期の寛解を目指します。
そばかす(雀卵斑)
他のシミと異なり、子供である3歳以降からでき始めることが多く、1-5mm程の小さな色素斑が目の下や頬、鼻などを中心にできます。時に目の上やおでこ、口の周りなど顔全体にできることもあります。顔の側面には少なくて、必ず顔の中央である鼻に色素斑があります。日焼けや妊娠で悪化します。レーザー治療がよく効きますが、遺伝的な要素もあるため再発も多いシミです。
⚫︎治療:ピコ秒レーザー、レーザートーニング(レーザーフェイシャル)、ハイドロキノン外用、シスペラ外用、セラピューティックプログラム
ピコ秒レーザーでの治療が最も効果は高いですが、ダウンタイムがあります。ダウンタイムを避けたい場合はレーザートーニング(レーザーフェイシャル)をお勧めしますが、回数が必要になります。また、そばかすはほぼ必ず再発しますので、症状改善後もサンスクリーンやハイドロキノン外用、定期的なレーザートーニング(レーザーフェイシャル)などの維持療法が必要となります。
炎症後色素沈着
ケガややけどの傷が治った後や、レーザーや液体窒素による凍結療法の後、帯状疱疹の治癒後にシミになった場合は炎症後色素沈着と考えられます。ケガの場合は砂利などの異物が残っていることがあり、その場合は外傷性刺青の場合もあります。色素沈着のみの場合は下記の各種治療で治癒することが可能ですが、傷が深かったりすると瘢痕(いわゆる傷痕)となっており、シミの治療だけではなく瘢痕の治療も必要になります。
⚫︎治療:トラネキサム酸内服、ビタミンC内服、ハイドロキノン外用、シスペラ外用、エレクトロポレーション、ケミカルピーリング、レーザートーニング、セラピューティックプログラム
瘢痕が軽度の場合は、炭酸ガスレーザーのフラクショナル照射での改善を見込めますが、深い瘢痕は当院での加療は難しい場合もあります。
アザ
いわゆるアザは大きく分けて二つの疾患群に分けられます。一つは母斑、いわゆるホクロの一種と考えられるもの、そしてもう一つは血管奇形(以前は血管腫と呼ばれていました)と考えられるものです。当クリニックでは一部の母斑の治療を行っております。それ以外の母斑や、血管奇形全般の治療は行っておりません。
当クリニックで治療可能な母斑群は、太田母斑と扁平母斑、異所性蒙古斑のみになります。
- 太田母斑
- 扁平母斑
- 異所性蒙古斑
⚫︎治療:いずれのアザもピコ秒レーザーにより治療を行います。ダウンタイムがあります。
その他
シミやアザと間違われる疾患としては下記の様なものなどが考えられます。
- 日光角化症
- ボーエン病
- 有棘細胞がん
- 基底細胞がん
- 悪性黒子型黒色腫
これらは全て皮膚がん、または前がん病変と言われるごく初期のがんと考えられる病変であり、しっかり診断を行わずに治療を行うと、大きな問題となってしまいます。当クリニックでは通常の美容クリニックと異なり、皮膚科臨床医としての豊富な経験を生かして、これらの疾患をしっかり鑑別し、適切な診断を行うことが可能です。ダーモスコピー(病変を拡大して詳細に観察する器具)を用いたり、皮膚生検を行って診断を正確に行います。その結果、当院で治療できない疾患であった場合は、適宜他院への紹介なども行います。
シスペラ(システアミン:多くのシミに効果のある新しい外用薬)
シスペラは「システアミン」を主成分とした美白剤です。システアミンは必須アミノ酸であるL-システインの分解生成物で、ヒト細胞によって合成される物質です。システアミンは哺乳動物の様々な組織に存在し、最も高濃度に含まれるのは母乳です。そのことからシステアミンは人体にとって非常に安全性の高い物質であるということがわかります。
現在、美白剤として主流なのはハイドロキノンであり、他の美白成分と比較しても有意に最も強い美白効果をもたらすことがわかっています。そして、システアミンはそのハイドロキノンよりもさらに強い美白効果をもたらすことが60年以上も前にわかっていました。しかしながらあまりに強い臭いのため、外用剤として使用することは不可能とされてきました。2012年に再開されたScientis社の研究により、システアミン分子の安定化と、臭いの減少を実現することができ、システアミンを5%配合するシスペラが誕生しました。システアミンは他の美白剤と異なり、非常に多くのメラニンを形成する経路を阻害することがわかっており、現在ある美白剤の中では最も効果が高いとされ、様々な臨床研究でそれが証明されています。American Academy of DermatologyやBritish Journal of Dermatologyなどといった皮膚科学の中でも非常に権威のある論文にいくつもの報告がなされていることから、その効果に関しては間違いありません。にもかかわらずハイドロキノンの様なアレルギー症状を生じることは非常にまれで、副作用もごくわずかなため、使用方法さえ守ればどの美白剤よりも優れていると言えます。また、シスペラには美白剤としての効果の他に、副次的な効果として肌のハリやツヤを引き出す効果もあり、美肌へと導きます。さらにハイドロキノンのように休薬期間を設ける必要はなく、長期連用も問題ありません。シスペラは顔だけでなく、口唇や乳輪、腋窩、デリケートゾーンなどといった皮膚の薄い敏感な部分にも問題なく使用できることから、とても使い勝手の良い美白剤です。